FreeStyle Seminar 2006 in Yamanashi 2006年11月26日
2004年のセミナーに続き、今年もイギリスからDr.アティラを講師にフリースタイルのセミナーが開催された。
26日は中上級者向けのセミナーで、見学者をふくめ、会場はほぼ満席の盛況ぶり。
今回はkuroさんがずっと通訳を務められたが、昼食時間を除き、朝9時半すぎから、
夜6時をまわってもセミナーは続き、ご自身の犬はほとんど出せないほどの忙しさだった。

以下はセミナーの内容ですが、管理人なりの解釈をしていますので、
「違う!」と思われたらこっそり教えて下さいね。

★ダンスの前に。
まずストレッチ。
人間のストレッチは予想できたのだが、なんと犬のストレッチもあった。

犬を立たせた状態(立止)で、鼻の先におやつなどをもって行き、首をゆっくり左右に向かせる。頭の高さはは水平。
つまり鼻の高さよりおやつを持った手を上げ過ぎたり下げすぎたりしない。
なるべく犬が自分のお尻を見るような形でゆっくり首を回せるのがのぞましい。

次に同じく立たせた状態で首だけを下げる。この時前脚を曲げないように首だけ下げさせる。
その後、犬が前足をぐっと前に伸ばす伸びの姿勢(おじぎ)。

お座りの状態から前足を持ち上げ、ちんちんの形をさせるが、前足と体を支えてやる。
その後二本足で立てる犬は、そっと前足を持ち上げてやり、この時も体をしっかり支えてやる。
★犬を決まった場所まで移動させて待たせる方法
これは、演技会場などで、目標物を決め、そこから少し離れたところ(手前)まで犬を前進させ、犬が自動的に、つまりハンドラーのコマンドが無くても、ひとりで止まるというものだ。

訓練競技をやっている管理人は最初これをオビディエンスで言うところの「前進」と勘違いしてしまった。
オビでは、犬にコマンド(「前へ。」)をかけ、10メートル先の目標地点に着いたところで、「待て!」をかけて犬を止まらせるというもので、この教え方がなかなか難しく、いまだにクリ家のワンズは未完成である。
そこで、頭の固い管理人は「止まれのコマンドはどうやってかけるのか?」と聞いてしまったが、そんなものは無かったのである。
つまり、高度な演技になると、ハンドラーと犬が背中合わせに前進し、ハンドラーが犬を見ず、全くコマンドをかけない状態で10メートル以上離れて演技をすることが必要となってくるのである。
そんな時、大きな声で「止まれ!」などのコマンドをかけるのは論外。
なんとまぁ、最初からかなり高度な課題にチャレンジすることとなった。

これはターゲットクリッカーを使ったトレーニングだった。
つまり、スティックなど目標となる「ターゲット」を決め、それに鼻をタッチさせたらクリッカーをダブルクリックして「それでいいんだよ。」と言うことを教える方法。
(※クリッカートレーニングの詳細については、クリ家は普段使わないので専門的なサイトを探してご覧下さい。)

この場合ターゲットは何でも良く、クリッカーを使わなくても、そこに鼻をタッチさせれば「グーッド!」や「イエス!」と声をかけてご褒美におやつなどを与える。
リンクの手前1メートルぐらいで止めたければ、そこにターゲットになるものを置いて、犬をタッチさせて「グーッド!」
何度も繰り返しているうちに、ターゲットを隠してしまい、犬がターゲットのあった場所まで行ったら「グーッド!」

最初はターゲットの近くからはじめ、少しずつ距離を伸ばしていくバックワードという練習方法である。
そしてこれらのトレーニングはどこでも、いつでも出来るように「一般化(Generalization)」していかなくてはいけない。
つまり、どんな環境でも、ターゲットから決まった距離で止まったり、あるいは方向転換が出来るようにするわけだ。
いやぁ、なかなか難しい。
★犬にバックを教える方法
犬を脚側状態でバックさせるのは鼻先におやつを持っていって声をかけながら、ゆっくりリードを引いて下げると教えることが出来るが、今回は犬と向いあった状態でバックを教える方法をならった。

犬の両サイドに障害物を置き、犬が脇にずれたり、Uターンしないようにしてから、足元に少々高さのある物体(たとえばカーペットを丸めた5センチ〜10センチ程度のもの)を犬の通り道に、犬が股がなければ通れないように置く。

次に、床の障害物の向こう側の脇に、犬が見えるようにおやつを置く。

まず、犬の前脚と後ろ脚の間に床の障害物がくるように犬を立たせ、犬が自分からおやつを取るためにバックするのを待つ。
前脚が床の障害に触れて、バックするしぐさをすれば「そうそう。」とか、「グー。」と言って犬を勇気付ける。
そのまま犬がバックを続けて、おやつを取ったら「グーッド!」やダブルクリック。

今度は、犬の後脚も床の障害物より手前に来るように立たせ、「そうそう。」など声をかけながら、再び自分からおやつを取りに行くように勇気付ける。
こうやって少しずつ距離を伸ばしていくことで、犬が曲がらないでバックするように教えることが出来るのだ。
★犬に「オン」と「オフ」を教える方法
興奮しやすい犬に「オン」と「オフ」を教えるというので、テンション高すぎクリさんモデル犬に立候補。
するとなんとほとんどのボーダーが立候補。やっぱりボーダーってそうなのね。

これは、犬と踊る前に、「さぁ、これから一緒に踊ろうね。」ということをはっきり示し、終わったら伏せさせてゆっくり耳の後ろや体をなでながら落ち着かせるというものである。
このとき決して無理に横に押し付けてはいけないし、上向きにする必要はないそうである。

「オン」と「オフ」で、クリさんのおたけびも少しは緩和できるといいのだが。
いずれにしてもテンションの高すぎるクリのような犬は、競技の前は少し走らせて疲れさせておくことが必要だそうだ。

逆に、リンクに入るとテンションが下がって動かない犬の場合は、何か出来たら褒めて、リンクの外から中に向かっておやつを投げて取りにいかせるのがいいのだそうだ。
★犬にムーヴ(動き)をすばやくさせる方法:制限時間練習
ハンドラーが出したコマンドに、犬が素早く反応してくれないと、ハンドラーの動きと合わなくなったり、音楽とずれてしまったりすることになるので、正確さを考えると、これはフリースタイルの要かも知れない。
(これは犬の動きがスローであるのとは意味が違う。コマンドが出されたら、すぐその「動き」が始められるようにするための練習である。)

これは「とろい犬」でお手本を見せるというので、ハンスが立候補。
ハンスとはダンスをしたことはなく、訓練競技会の会場でも、トボトボ付いてくる情けないやつなので、絶対ぴったりのモデル犬だと思ったのに、リンクの中央で、「レフトターン」(左回りにその場で回転)と声をかけたら、くるっと廻りおった。
話が違うでしょう?って感じだったが、何回も歩いているうちにだんだん化けの皮が剥がれ、「レフトターン」すら完璧にマスターしていないことがバレてしまった。

つまり、彼は管理人の口調や、意識していない体符を見ながらターンしていたわけで、管理人が前方をキッと見据えて、微動だにせず、普通の声で「レフトターン」と言うと、何をしていいかわからなくなってしまうのである。

Dr.アティラは前日行われた競技会を見て、ハンドラーのコマンドの声が大きすぎると指摘された。
特にボーダーコリーは目で見て判断する犬種なので、声符というより、口の動きや、ハンドラーの体の動きでコマンドを判断するというのである。

そこで、管理人がささやくような声で「レフトターン」と言って出来たら褒めておやつをやる。
とろとろしてたらおやつは無し。素早く廻れたらおやつ。ということを繰り返していたら、なんとハンスが一生懸命こちらに集中して、管理人の口を読もうとしている。
すごいじゃん。ハンス♪
そしてそれを「一般化(Generalization)」すると、横でターン、前でターン、右側でターンなど、犬とハンドラーの位置関係が変わる分だけムーヴが増えたのである。
★ご褒美のやり方
何か新しい動きを覚えている時は、出来たら瞬時に褒め、確実に出来るようになるまでは、おやつなどのご褒美を与えるのは問題ないが、フリースタイルの演技時間は2分〜4分近くあり、その間集中力を持続させるためには一つの「動き」ごとに毎回ご褒美を出すのではなく、一つから二つ、三つとつなげる練習が必要になる。
そのつながり(シークエンス)が二つで来たら、一つだけの時よりちょっと大きなご褒美、そして三つになったらもうちょっと大きなご褒美を与え、犬に集中力と意欲を持たせることが重要である。
例えば、左脚側で歩いて左ターン(1)が出来たら、脚の間をくぐらせて右脚側につけ(2)、今度は右側で右ターン(3)といったようにシークエンスを作った場合、(1)が完璧になったら、(2)の練習、(2)が完璧になったら(1)のあとにご褒美を出さないで(2)まで出来た時ご褒美が2倍になるといった感じだ。
また、シークエンスもいつも1、2、3、4ではなく、時に2、3、4だったり、3、4、5、だったりとバリエーションを変えるといい。
★競技の採点方法
今回の採点方法は芸術点(Artistic Merit)と技術点(Technical Merit)がそれぞれ10点満点で、合計20点満点がパーフェクトである。

芸術点の中には
1.Motif(ダンス(ルーティーン)のテーマ、観客にアピールするもの)
2.Rhythm(「動き」が音楽と合っているか)
3.Design(リンクの使い方はどうか、人だけが目立つのではなく、犬に視線が集まるようにしているかなど)
4.Dynamics(ゆっくり動いたり、速く動いたりして、躍動感はあるか)
が含まれ、おのおの2.5点満点である。

技術点は
1.Content(「動き」の数やトリックの難易度)
2.Accuracy(「動き」の正確さ(コマンドに正しく反応しているか)
3.Cue(犬への合図がダンスの振り付けの一部になっているかどうか)
4.Flow/Transition(「動き」から「動き」のつなぎ方はスムーズかどうか)
を採点され、こちらもそれぞれ2.5点満点
★シークエンスの作り方
セミナーの最後は4人のハンドラーがしりとりのように「動き」を一つずつ考えて、シークエンスを作り、違ったリズムの音楽を使い、そのシークエンスを表現するというものだった。
クリスの場合、速いテンポの曲は合わせやすいが、ゆったりとした音楽になると、動きと曲がマッチしないので非常にやりづらかった。
これはシークエンスの作り方や曲選びの良い勉強になったし、結構楽しかった。

全てが終わる頃には外は真っ暗でお腹も空いたが、丸一日のセミナーは集中出来て大変勉強になった。
そして、「もしかしたら、ハンストも踊れるかも知れない。」というささやかな希望を管理人に持たせてくれたのだった。

はるばる来日してくれたDr.アティラはもちろんのこと今回主催してくださった幸松先生やkuroさん、本当にお疲れ様でした。
また次回を期待していますので、宜しくお願いします。
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