PART 12:誤飲

我が家のワンズは元来胃腸が丈夫である。
時折お腹が空きすぎて胃酸を吐く子がいたりするが、下痢する子はいない。
クリスがお産の直後、具合が悪くなったのと、今の家に越してきたころ、体調を崩したくらいである。
普段、食して良いものを食べている分には当然お腹は絶好調だが、たまに悪戯が過ぎて、変な物を食べると1日〜二日後にトイレで発覚することがある。
クリスは子供の頃、キュウキュウおもちゃを破壊して、残骸が出てきたことがあったが、大人になってからは皆無だった。
ところがニッキーは大人に成っても、たまにティッシュやらペンシル型の口紅やらが出てきたりする。


以前飼っていたハスキーのスコット君は、これまたお腹が丈夫な子だったが、この子も何でも口にしてしまう悪い癖があった。
生後7ヶ月まで外の犬舎暮らしをしていたらしく、我が家にやってきた時は、なんでもかじって破壊した。
玄関の上がり框に始まり、テレビのリモコン、台フキン、私のポロシャツ。
食べるたびに、庭にいろんなものが残骸となって転がっていた。

極め付きは「影」が友達と大騒ぎをして2階から落とした乾電池。
玄関で寝ていたスコットのおもちゃになってしまったらしい。
気が付いた時は、電池はその原型を留めず、中から出てきたマグネシウムが玄関のたたきに広がっていた。

急ぎ獣医さんに電話したが、手立てはなく、水を沢山飲ませて吐かせるようにとのことだった。
私はスコットを庭に連れて行き、散水栓のホースを口の中に突っ込んで蛇口をひねった。
かなりの荒療治だったが、結局彼は吐かなかった。
そしてごはんも食べず、具合悪そうにしていた。

眠れない一晩を過ごし、翌朝玄関に下りてみると、たたきには真っ黒な液体が。
夜中に吐いたらしい。

そしてあれから10数年。
ハンスがやった。
ニッキーのために買ってやったチビコングを、ちょっと目を離したすきに破壊し、飲み込んだのである。
床の隅から隅まで探してみたが、ちぎれた部分がみつからない。

夕食後、しばらく様子を見ていると、時折、何かを吐こうとして咳き込んでいる。
気のせいか目も充血している。
夜中に彼をお風呂場に連れて行き、口を開けさせ、ペットボトルで水を流し込んだ。
咳き込んで水は吐いたが、物体は出てこなかった。
もう一度やると、必死の抵抗で私の指を思い切り噛んだ。

翌日は時折咳はするものの、元気はあった。
普通にごはんを食べて詰まってしまっては大変と、食事は少量にした。

競技会会場にお供でついてきた彼を車から下ろすと、せっせと地面の草を食んでいた。
いつもは、「ウンチがつながるから食べちゃダメ!」と言っている私だが、その日は、
「そうそう、いっぱい食べて吐いちゃいなさいよ。」とほうっておいた。

夜帰宅し、人間の食事や犬の食事の支度で部屋を空けて戻ってみると、犬舎の横に草とコングの一部が吐き出されていた。
若干形は小さいものの、無くなった部品の半分以上の大きさである。
多分このまま行けば、残りは下から出てくれるだろう。

そして今夜散歩に連れて出ると、ウンチの中に赤いツブツブが。
コングは食べる物とは認識していなので、噛んでいるうちに誤飲したと思うが、久しぶりにドキッとさせられた一日だった。

大好物の骨などは、小さくなると飲み込んで危険なため、適当なところで処分していたが、買ってきて間もないニッキーのおもちゃがわずかの時間に破壊されてしまうとは...。
目の離せないお子様達である。


2005年5月16日
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