Part 8:親子の多頭飼い
クリス家の場合

その3 クリ家の力関係

犬を親子で飼っている場合の親子の力関係はどのようになっているのだろうか。クリ家の場合一見クリスが一番強いようだが、実際はどうなのだろう。

食餌中:3頭同時に食べさせているが、クリスは食べている時には誰も傍に寄せない。間違って近づこうものなら、「うぅ〜っ」と威嚇する。自分のペースでゆっくり食べるので、食べ終わるのはいつも一番最後。
ハンスも自分のペースでゆっくり食べるが、食べ終わるとまわりが気になって、隣で食べているニッキーを覗き込んで自分から喧嘩を売って大騒ぎになったことがある。
ニッキーは喧嘩を売られてから早食いになり、いつも一番最初に食べ終わり、バックしながらその場を立ち去り、部屋の隅で余韻を味わっている。
クリスは私が食器に手をつっこんでも何も言わないが、傍で顔を寄せて欲しそうにしてみせたら口元をピクピクさせたので、思いっきり私に怒られたことがある。が、子供たちは手をつっこもうが、隣で顔を突き出そうが気にせずごはんを食べる。

遊んでいる時:おもちゃや骨で遊んでいるとき、クリスやハンスは私のところへおもちゃを持ってきて遊ぼうと誘う。が、ニッキーは机の下に持っていって抱え込んでかんでいる。
クリスは子供達におもちゃを取られると自分で取り返すことが出来ない。必ず私のところに鼻をならしながら「取ってくれ」と言いに来る。が、ハンスは誰が持っていようがお構い無しに取りに行く。
ハンスが傍にくるとクリスもニッキーも唸ってとらせまいとするのだが、クリスはちょっと口からはずしたときに横取りされる。ニッキーは決して口から放そうとはしないし、たとえ放しても両手の下に隠してその上に顎を乗せて知らん顔する。クリスもハンスも一度手に入れるとさほど執着しないし、ハンスは「お母さんが欲しいって言ってるわよ。」と言うと、噛むのをやめて鼻で前のほうに押し出すことさえあるのに、ニッキーは手に入れるとず〜っと手元においておこうとする

トイレ:クリ家は雨が降ると基本的に散歩に出ないので、トイレはバスルームで済ますことにしている。Part 3:トイレトレーニング」にも書いているが、ニッキーはトイレが近かった小さい頃から一番先にトイレに飛び込む。狭いので1頭ずつしか入れないのだが、なぜかニッキーの次にハンス、クリスという順番は誰が決めたわけでもないが守られている。
寝室からバスルームへ降りていったとき、階段の窓が開いているとニッキーは必ず2軒隣のミーちゃん(ネコ)を探して外を見ているが、トイレの準備が出来てもまだ窓の外を覗いている彼女を飛ばして他の子がくることはない。バスルームの外でみんな待っているので、仕方なくニッキーを呼ぶ。そして順番とおりに事は済むのだ。
外でする場合は問題なくみんな一緒に済ませるので順番は家の中だけに限られているようだ。

散歩の時:3頭連れて歩いているとき、一番左先頭を歩いているのがニッキー。ハンスはそれに遅れまいとしながらも私の左横を陣取る。クリスはハンスに押し出されるので結局ハンスの後ろをついてくる。
とくに何の障害もなければこの隊列は変わることなく無事に散歩を終えるのだが、途中で子供達の大嫌いなキックスケーターやスケボーが登場するとニッキーは突然恐怖心からガウガウ。ハンスはニッキーを行かせまい、でも僕も行きたいとガウガウ。「イケナイ!」と叱る私の言葉を普段から聞いているクリスは、私が叱るより前にニッキーを叱って転がす。母は強し。


多頭飼いは犬種が違ったり、あるいは血縁の有無によってその関係が全く変わってしまう。
クリ家の場合も、気の強い母とその子供達、しかも同胎のオスとメスという組み合わせが特殊な力関係を作り、現在の状況にいたっていると思う。もちろん飼い主の接し方も大きくかかわってくるのだろうが。


結論とすれば1頭飼いより多頭飼いの方が性格の違い等あって楽しいのは確かである。犬にとっても人間と1対1より気の合う仲間がいれば人間が留守の時も退屈しないのかも知れない。
しかし犬にとって1頭飼いと多頭飼いのどちらがいいのかは犬種によっても個体差によっても違ってくると思うので一概に結論は出せないと思う。
ただ、これだけは言える。同胎のボーダーコリーを2頭以上一緒に育てるのは大変である。1頭ずつ別々にしつけや接する時間をとってやらないと彼らだけのルールを作り、長年人間と1対1で暮らした母犬と違って半分以上犬なので、誰をリーダーとするかその時々で自分達で判断しようとするのである。つまり飼い主を優先するか母を優先するか瞬時に選ぶのである。
母と子供達の関係を全く無視して人間と犬達の関係を築ければそれにこしたことはないが、なかなかうまくいかないのが現実。一生の課題である。
みなさんはどう思われるだろうか……    

---------END                                       (2003年4月)


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