北京冬季五輪 国際放送センター(IBC)

メディア・センター  (国际广播中心与主媒体中心)
Main Media Center(MMC) 

 

 国家会議中心(第二期新館) Source Beijing2022  

 メインメディアセンター(MMC)は北京市のオリンピッック公園内に立地している世界最大級の国家会議センター(総面積41万9000平方メートル)の内、第二期工事で建設した新館(北館)の約9万8000平方メートルを使用して整備された。その内、MMCコアエリアは6万1000平方メートルである。五輪開催中は約100の国と地域から、約2800人の通信社や新聞、雑誌・WEBメディアのジャーナリストやスチールカメラマンと、22のRHBs、130のテレビ&ラジオ放送機関から約9000人(RHBsは38の放送機関の5700人とOBSスタッフ4300人)が参加した。1日平均、5000人~6000人がMMCで活動する。
 今回、初めて新聞や通信社のジャーナリストが参加するメインプレスセンター(MPC)とRHBs(ライツホルダ― 放送機関)が参加する国際放送センター(IBC)が、メインメディアセンター(MMC)として統合されることになった。統合案は、MPCとIBCの幅広い施設を共有化させてスペース削減と効率化を行い、経費削減を実現する。 この結果、IBCは当初計画3万6000平方メートルから3万平方メートルに削減することに成功する一方、、RHBsの専用スペースとして2つのフロアに合計12のコンパートメントと13のスタジオを整備を実現した。一方、当初はMPCに使用する計画だった2万8000平方メートル(地上部分)は削減した
 MMCは、北京夏季五輪2008のIBC/MPCを設置した既存の北エリアの会議場はは使用せず、新たな第二期プロフェクトで新設した南エリアの新会議場を使用して設営された。
 新館は、総面積77平方メートル、長さ約460メートル、幅150メートル、地上3階、地下2階の巨大な施設である。コアエリアの本館のエギビジションセンターは約53万平方メートル、ホテル2棟、オフィスビル2棟、商業ビルが入る別館は約26万平方メートルとなる。
 完成後は、既設の国家会議センターエリアと合わせて合計140万平方メートルの巨大なエギビジションセンターと会議場の複合施設となる。
 第二期で建設した会議場エリアは、「グリーンオリンピック」のコンセプトを実現するために、国際認証団体の最高クラスの3つ星のグリーンビルディング基準とUSLEEDプラチナ基準に従って整備された。会議場3階の屋上庭園は開閉可能な屋根設計を採用し、約3,000平方メートルのガラス天窓屋根は大規模な電気開閉を実現し、自然換気や自然照明の効果を高めている。
 MMCは、再生可能エネルギーをフルに活用し、1日あたり17.5トンの温水生成可能な600平方メートルの太陽熱システムを設置した。本館の空気空調システムは、外気比率を70%に調整し、年間消費電力の約31%を節約可能にし、年間の電気使用量を大幅に節減する。
 IBCには、TOKYO2020に引き続き6つの集中テクニカルエリア(CTAs)を設置して、熱、換気、空調(HVAC)や放送機器の電力使用量を削減することで、環境への配慮を強化した。CTAsは複数のRHBsで共用するために、スペースの効率利用やコスト削減が可能になる。
  MMCには、4つの記者会見ホールが設置され、最も大きなホールは、1階の南側にあり、面積は約930平方メートルで、380人の参加者を収容でき、8言語の同時通訳サービスを備えている。国際オリンピック委員会(IOC)、国際スポーツ連盟(IF)、国内および地域オリンピック委員会(NOC)、北京冬季五輪組織員会、オリンピック放送機構 (OBS) などの記者会見を開催する。競技期間中は。毎日のブリーフィングも開催される。
 MMCでは、メディアに対して、「Media +」専用回線通信、無線周波数、放送コンバージェンスネットワーク、リモート同時通訳、リモートスポーツディスプレイ、バリアフリーネットワークなどを提供する包括的な技術サービスが備えられている。 MMCに離接して、3つ星と5つ星の2つのメディア専用ホテルを提供し、レストラン、銀行、宅旅行代理店、郵便局や宅配便、ショップも備える。メディア輸送センターが設置され、ホテル、各種競技会場、3つの競技エリアを結ぶ40本以上の輸送シャトル路線と北京エリア内の循環シャトルバス路線が運行される。
 OBSは、RHBsが北京五輪の魅力を世界に発信できるように、MMCと鳥巣の間に7階建ての多機能スタジオタワーを建設した。
 2021年7月6日、工事が完了し、北京冬季五輪組織委員会からホストブロードキャスターのOBS(Olympic Broadcasting Services:オリンピック放送機構) に引き渡され、2022年1月4日にソフトオープンして、RHBsが設営を開始した 。
 MMCは2022年1月24日から2月20日まで、24時間体制でメディアにサービスする。

 

Source 新华全媒+ Source 新华全媒+

OBS TV Studio(山地電視演播室) IBCタワー 張家口ゾーン
 張家口山岳放送センター(ZBC:Zhangjiakou Broadcast Center)では、51の競技と49の表彰式を、1の放送機関(OBSを含む)が中継オペレーションを行う拠点。ジャンプ台やクロスカントリーコースがある張家口の古楊樹場館群に建設された。山岳放送センターは、ジャンプ台の真向かいの丘の中腹に設置されたテレビスタジオ(総面積8,000平方メートル 放送関係エリア5000平方メートル)と丘の麓に設置された本館(総面積12,000平方メートル)の2つの建物に分かれ、120のRHBsが五輪中継放送を行うハブとして機能する。冬季五輪では過去最大規模の山岳放送センターとなった。本館は、4つの独立したした中継技術コンパートメントが設けられ、技術集中エリア(CTAs:Centralized Techinica Areas))がTOKYO2020のIBCに引き続いて導入された。放送機関が占有する床面積は約5000平方メートル、1日平均400人、ピーク時は600人のスタッフが参加する。 テレビスタジオは3階建ての建物で、ジャンプ台や観客デッキを見下ろせる丘の上に設けられ、広い視野が確保できるように設計された3階フロアには10のスタジオが設けられ、16のRHBsがオペレーションを行う 。中国中央電視台やNBC、BBCなどのRHBsやホストブロードキャスターのOBSが使用する。全面ガラス張りで、北京冬季五輪のランドマーク、ジャンプ台(「雪如意」)を背景にして、各RHBsは中継放送を行う。スタジオの屋上にはビューティカメラが設置され張家口の雪景色がRHBsのサービスされる。  2階フロアは、技術運用センターやOBS倉庫が設置される。   張家口山岳放送センターの運営は、73人のOBSスタッフ、155人のボランティア、369人の契約技術者の合計597人、20のプロジェクトで構成されている。OBSは2021年7月から準備に入り、2021年11月1日に設営を開始した。2022年1月4日、プレオープンをしてRHBsが設営を開始した。

OBS TV Studio(山地電視演播室) Source Beijing2022

冰玉環(ICE RING) 高架式歩道 Source Beijing2022 冰

玉環(ICE RING)と地放送センター(本館 山地轉播中心) Source Beijing2022

OBS TV Studio(山地電視演播室) Surce 中新網 OBS TV Studio(山地電視演播室)Surce 中新網

張家口山岳ニュースセンター(山地主媒体中心)

 張家口山岳ニュースセンター(山地主媒体中心)は、張家口ゾーンの雲頂滑雪公園(Genting Snow Park)に雲頂会議センターを改装して整備された。世界から約1000人の通信社や新聞社、雑誌・WEBのジャーナリスト、スチールカメラマンが参加する報道拠点である。北京冬季五輪組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)などがメディアに公式情報を提供する。1階は世界の大手通信社の専有レンタルスペース、2階はメインサービスデスク、記者会見ホール、メディアメインワークショップ、公共サービスエリア、写真サービスセンターなど、3階はプレス席が設置される。
 1回のスペースには、ロイター、AFP、AP、新華社など9つの通信社と1つの国内オリンピック委員会が入居する。

OBS フィギアスケートなどにMulticamera Replay Systemを本格的に導入
 北京冬季五輪のホストブロードキャスターは、Multicamera Replay Systemを本格的に導入、100台を超える大量のハイスピード4Kカメラ、選手の動きをさまざま角度から撮影して、合成して連続して見せる新たな映像技術、「タイムスライス」(time-sliced views)を競技中継に採用した。
 北京冬季五輪では、フィギアスケートを始めアイスホッケー、スキー・ジャンプ、フリースタイルスキー、ハーフパイプ、ショートトラックなどに10システムを配置してオペレーションを行った。
 100台の4Kカメラは、壁面などに一定の間隔で設置され、動きの速い被写体の決定的なシーンを、アングルを動かしたい方向に順番に連続撮影していく。
 撮影された画像は、一枚一枚切り出して合成し、連続して見せる映像技術である。100台のカメラの4K映像をわずか5秒以内で処理可能だ。
 高速で移動する被写体の動きを少しづつアングルを変えて、スローモーションのように被写体の軌跡を見せるというインパクトあふれた映像表現が可能になる。
 映画「MATRIX」では、「パレットタイム」と呼ぶこの“time-sliced views”の映像技術で撮影されたシーンが評判を呼び、新たな映像技術として注目されている。

スピードスケートセンターに設置されたMulticamera Replay System Source Yiannis Exarchos Twitter

フィギアスケートフリー 鍵山優真選手のtime-sliced views Source NHK中継画面

米NBCU、スポーツ中継アナウンサーを北京五輪に派遣せず…新型コロナ感染を懸念 米メディア報道
 米NBC Universalは2月4日に開幕する2022北京冬季オリンピックに新型コロナウイルス感染を懸念し、スポーツ中継のアナウンサーとコメンテーターを派遣しないと米紙USAトゥデーやAP通信などが19日(現地時間)報道した。
 NBCUは当初は、アルペンスキー、フィギュアスケート、スノーボード競技についてはスポーツ中継チームを派遣する予定だったが、中国での新型コロナウイルス拡散状況と人権問題の言及など「オリンピックの精神や中国の規則」に違反した場合は処罰の対象になり得るとする「無寛容原則」を考慮し、数週間前に計画を変更したという。
 人気競技3競技に関してはギリギリまでキャスターやコメンテーターを派遣する方向で調整を進めていたが、最終的に派遣は見送りとなった、
 ただし、NBCスポーツの代表や放送中継技術職員など250人はすでに北京入りしている。
 NBCUは、北京の国際放送センター(IBC)から競技中継映像のライブ伝送を米国内で受けて、コネティカット州のスタンフォードのスポーツ中継拠点で、リモート制作を行い、地上波テレビ、衛星、CATV、ネットサービスの中継放送番組を制作する。キャスターやコメンテーターはスタンフォードのスタジオで出演し、競技中継はすべてオフチューブ方式で実施する。
 2月4日の開会式に関しては、現時点では人気スポーツキャスターを派遣して、現地から中継する計画を維持している
 NBCUは、2020東京五輪大会でも、陸上、水泳、体操などの主要競技は東京にキャスターやコメンテーターを送り込んで中継したが、ほとんどの競技はスタンフォードなどの米国内の拠点でリモート制作を行いオフチューブ方式で中継番組を放送した。

⇒北京五輪の最大のアキレス権 人権問題 “外交的ボイコット ”

 

北京冬季五輪 IP革命の象徴 クラウドシステム 新たな放送サービスのスタンダードして確立

 北京冬季五輪は、放送オペレーションのすべてのコア・システムがクラウド上で運用されるクラウド・テクノロジーが新時代のベンチマークとなった画期的な大会となった。
 国際オリンピック委員会 (IOC) の最高情報技術責任者は、「これらのイノベーションを通じて、より速く、より効率的で、より持続可能なゲームの情報を世界中にリアルタイムで提供し、新たな大会運営のスタンダードを確立することができた」と語った。
 2018 年にOlympic Broadcasting Services (OBS) は Alibabaと提携し、 クラウド上で放送オペレーションを行う革新的なソリューションである OBS Cloud を導入した。  
 OBS Cloudは、東京オリンピック・パラリンピック大会で初めて使用され、合計 9,500 時間のコンテンツが配信された。
 北京2022 でも、OBS Cloudを通じて 6,000 時間を超えるコンテンツが世界中の放送局にライブで提供された。 IOCは「冬季オリンピックで制作されたコンテンツを取得するために世界中のすべての放送局が使用している OBS クラウドを立ち上げることができた」と 述べ、このクラウド サービスを「画期的」であると絶賛し、ライツホルダー(RHBs)はテレビやデジタル・メディアで多様な大量のコンテンツをライブで視聴者にサービスすることが可能になったと指摘した。
 IOCの責任者は「私たちは常にテクノロジーのパイオニアと見なされているとし、 「クラウドで何ができるかがわかったとき、これがデジタル トランスフォーメーションが一気に加速できると確信した」と述べた。従来の衛星伝送と比較して、クラウド配信ははるかに技術的に優れていて放送テクノロジーのレガシーとなるだろうとしている。
 クラウド・テクノロジーの導入で、巨大な中継車 (OB VAN) の機能はサーバー・ルームにとって代わり、OB VANは不要となった。
 「クラウド・サービスの伝送は衛星伝送に比べてはるかに低コストであり、オリンピックのコストを削減するという IOC のオリンピック アジェンダ 2020+5 の目標に沿っている。持続可能性を改善するためのIOCの方針をサポートしているシステムだ」とした。
 放送局はクラウドベースのIP技術を導入することで、大会中継番組のリモート制作が大幅に可能になり、放送サービスの効率化と経費削減が可能になり、視聴者は豊富なコンテンツがライブで、多様なメディアで視聴可能になる。クラウド・テクノロジーは視聴者に新たな視聴体験をもたらした。