パリ五輪

Paris2024


社長

出典 Paris2024

出典 Paris2024


Paris2024 目玉はセーヌ川の開会式
 2024夏季オリンピックは、2年後の2024年7月26日から8月11日までフランスのパリで開催される。32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人にした。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。
オリンピック村から10km以内にある14の会場で24の競技が行わるが、競技場はエッフェル塔やグランパレなどの中心部のランドマークまで、セーヌ川に沿って集中的に設置される、
異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計35の競技場が整備されるが95%が既存または仮設施設利用する。
 開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
Paris2024の最大の「目玉」は、史上初のセーヌ川で開催される開会式、空前の60 万人以上の観客が予想されている。
 200 カ国以上からの選手や関係者を乗せた160 隻以上のボートが、セーヌ河を約6km航行、ルートにはパリのランドマーク、ノートルダム、オルセー美術館、ルーブル美術館、ポンヌフ(パリ最古の橋)、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。
 川岸の下流エリアはチケット制だが、上流エリアは無料で入場でき、ルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設置される。
 主催者は、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。
 まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。
Paris2014開会式 出典 Paris2024
異例の展開 2024夏季大会招致
 Paris2024が決まったのは、極めて異例の展開の中で行われた。
 2024年夏季五輪大会に最終的に立候補したのは、ブダペスト、ローマ、ロサンゼルス、パリの4都市だった。パリは1924年パリ五輪から100周年の節目の年の開催を目指した。
しかし、暴騰する開催経費の懸念や住民の反対運動などでブダペスト、ローマが相次いで撤退し、結局残ったのはロサンゼルス、パリの二都市となってしまった。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、住民の理解が得られず五輪大会の開催地に手を挙げる都市がいなくなることに危機感を抱き、立候補したパリとロサンゼルスを24年と28年の2大会の開催都市に振り分ける異例の同時決定を行った。
 IOCはどちらの都市が先に開催するかは、二つの都市で話し合うことを求め、その結果、「100周年」を掲げるパリが24年、ロサンゼルスが28年に決着した。
 IOCのしたたかな戦略が浮かび上がる。
五輪開催を契機に「パリ改造」
パリといえば、19世紀末の「オスマンのパリ改造」によって作られた大きなブルバードと石畳の舗道、その両脇に建てられた統一感のある建物が形作る景観の都市美で世界中に存在感を示していた。
 パリ市長の左派・社会党のアンヌ・イダルゴ氏は、五輪開催を契機に、21世紀型の「パリ改造」に挑む。
イダルゴ氏の公約は、「パリを緑でいっぱいの都市に」、パリのシャンゼリゼ通りの1.9㎞を壮大な庭園にして、エッフェル塔周囲の広場を公園として緑化、パリ最大の広場であるコンコルド広場も緑豊かな空間として再生する。セーヌ川の水質も改善して、安全に水泳ができるようにするとしている。
脱自動車社会の実現にも力を入れる。道路の車線を半減させて自動車通行を規制して自転車道を増やし、排気ガスの少ない安全な自転車・歩行者天国にするという構想である。自転車で15分以内のところに通勤、通学、買い物などの行動範囲が収まる「15分シティー」を目指す。
イダルゴ氏は、2024年からディーゼル車、2030年にはガソリン車の利用を禁止、市内のタクシーをEVにするという計画も打ち出している。
 最大の課題は、財源の捻出だろう。
Paris2024を襲う4つの暗雲 ①世界的なインフレで、開催経費急騰 スリム化に苦闘
 Paris2024組織委員会の開催経費は、当初は38億ユーロ(約5320億円)だったが、昨年12月の見込みでは、一気に膨張して 43 億 8000 万ユーロ(約6132億円)に跳ね上がったことが明らかになった
 約 10% の増加要因の約半分は、ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー・コストの上昇によって引き起こされたインフレによるものである。
Paris2024組織委員会のトニー・エスタンゲ会長は、10% 増は予想していたとし、「Paris2024の責務はバランスのとれた予算を実現することだ」と自信を示した。
 この内、開会式と閉会式(オリンピックとパラリンピック)の経費は1億ユーロ(140億円) から1億 3,000 万ユーロ (約182億円)に増加した。
Paris2024の最大の課題は、セキュリティ対策、その経費は、さらに 4,000 万ユーロが増額され、合計で 3 億 2,000 万ユーロ (約450億円)に急増した。
 チケット収入については、当初は126 万 5000 ユーロ (180 万ポンド / 133 万ドル) という予測から有観客開催が可能になるとして、1340万枚の販売目標を掲げ、 1 億 4300 万ユーロ(約200億円))に 増加、朗報である。大会関係者と報道陣の座席数を減らして観客の座席数を大幅に増やした。
州と地方当局がパラリンピック対して、7,100 万ユーロ (6,100 万ポンド/7,500 万ドル) の資金を提供し、予算全体における公的資金の割合を3% から 4% へ増加させて、 1 億 7,100 万ユーロ(約240億円) (1 億 4,700 万ポンド/1 億 8,000 万ドル) にするとした。
 エスタンゲ会長は「あらゆる方向で経費削減を模索した」と述べた。
Paris2024組織委員会は、コストを 4 億ユーロ (4 億 600 万米ドル)(約560億円) 削減する取り組み明らかにして、その一環として、競技場マスタープランを発表した。
卓球や柔道、テコンドー、競泳は、オリンピックとパラリンピックを同じ会場で開催することになった。
 この変更で、ル・ブルジェ・アリーナとオリンピック アクアティクス スタジアムの 2 つの仮設競技場の建設を取りやめた。
組織委員会では会場の賃貸コストを削減するために、施設の賃貸期間を可能な限り短縮した。
 選手村の開場日は 4 日間延期されて 7 月 18 日になり、競技会場は、選手村の開場時ではなく、最初の競技セッションの 7 日前に開場することになった
 また、コスト削減策の一環として、輸送システムを効率化する措置を講じた。この結果、大会運営で使用する車両数を30%から40%減らすことが可能になるとしている。
 大会関係者はこれまでの専用車両の送迎から地下鉄やバスを利用して移動することになる。
観客の移動は当初の計画では公共交通機関は無料としていたが有料化に切り替える
 さらに、フランスの物価上昇率は、6%超を続けている。2024年までまだ2年、今後もインフレは続き、建設コストは急増して、国や自治体の公共インフラや施設整備コストも含めると100億ユーロ超(1兆4000億円)は必至の情勢という見方もある。Tokyo2020は新型コロナのパンデミックとの闘いだったが、Paris2024はインフレとの戦いになった。
Paris2024を襲う4つの暗雲 ②難航、Paris2024のスポンサー確保
 開催都市の組織委員会の収支を赤字にしないキーポイントは、ローカルスポンサー収入をいかに確保するかにかかっている。
 五輪大会のスポンサーシップは、国際オリンピック委員会(IOC)が管理するグローバルなTOPスポンサーシップと、開催都市の組織委員会が大会ごと設定する国内ローカルスポンサーシップの2つがある。
 TOPスポンサー料はIOCの収入、これに対してローカルスポンサー収入は組織委員会の収入となるので自ずから力が入る。
Paris2024組織員会では、プレミアムパートナー(Tier1)、オフイシャルパートナー(Tier2)、オフイシャルサポーター(Tier3)の3つのカテゴリーを設定した。この枠組みはTokyo2020と同じである。スポンサー収入の目標額は約11億ユーロ(約1540億円)を掲げた。
2022年6月、Paris2024組織員会は、食料品スーパーのCarrefourとプレミアムパートナー(Tier1)の契約に成功、プレミアムパートナー5社を手にした。これまでに契約を終えた企業は、仏第二位の銀行グループのBPCE、通信企業のOrange、 エネルギー企業のEDF、バイオ医薬品企業のSanofiの4社。スポンサー料は1社平均1億5000ユーロ(約210億円)とされ、合計約7億数千万ユーロ(約1000億円程度)を確保して順調に推移しているとした。
組織委員会では、2022年末までに、Tier1~3のスポンサー収入の目標額、約11億ユーロの約80%の確保を目論んでいる。
しかし、新型コロナウイルスの影響と国民のオリンピック人気の伸び悩みで企業舞インドが高まらず、目標達成は難航しているとされている。
2022年1月、エスタンゲ組織委委員長は11億ユーロというスポンサー収入の目標を維持するとしたが、スポンサー企業を探すことは「本当の挑戦」であると述べ、目標達成が難航していることを認めた
そしてさらに難題を抱えた。インフレの影響で開催経費が高騰したことでその穴埋めで、急遽、予想収入を、当初予定の11 億ユーロ(約1540億円) (9 億 4,000 万ポンド / 11.6 億ドル) から 12.3 億ユーロ(約2173億円) (10.5 億ポンド / 13.0 億ドル) に引き上げたという。
エスタンゲ会長は「さらに約10社程度のパートナーが参加する可能性があり、最終目標の90%を超えるのを確信している」と自信を示しが、先行きは明るくない。
 Paris2024に対して、Tokyo2020では、ローカルスポンサー収入は、コロナ過で1年延期、無観客開催という未曽有の逆境に遭遇してにもかかわらず、史上最高額の3761億円を達成し、開催経費の収支を赤字に転落するのを防いだ。
Paris2024のスポンサー収入の目標は、Tokyo2020の半分以下、Tier1のスポンサー企業数で比べても、Paris2024は5社、TOKYO2020では15社、いかにTokyo2020のスポンサーシップが好調だったかに改めて感心する。
出典 Paris2024
Paris2024を覆う4つの暗雲 ③テロの悪夢
 華やかな国際都市パリは、テロの脅威にさらされている都市でもある。いまでも「厳戒態勢」にある都市だと言っても良い。
2015年11月に発生したパリ同時多発テロ事件の強烈なインパクトが今でも残る。
パリ市街と郊外(バンリュー)のサン=ドニ地区ので、イスラム過激派よる銃撃おや爆発が同時多発的に発生し、死者130名、負傷者300名以上の犠牲者を出した大惨事となった。
爆発が起きたサン=ドニにあるスタジアム、スタッド・ド・フランスでは、男子サッカーのフランス対ドイツ戦が行われており、フランスのオランド大統領とドイツのシュタインマイアー外務大臣も観戦していたという。
フランスの治安専門家は、「オリンピックは治安リスクの悪夢になるだろう」と述べている。
Paris2024には、世界各国から1,200 万人の観光客が訪れるが、その安全を確保すると共に、オリンピック選手村や競技場エリアに出入りする大会関係者を監視しなければならない。
最大の問題は、セーヌ川で開催される開会式である。60万人を超える観客が殺到することが予想され、「無差別テロ」のリスクは極めて高い。
Paris2024組織委員会は、大会開催に伴うセキュリティに責任を負い、20,000 から 33,000 の民間警備員を雇用するとしている。
セキュリティ経費の膨張も悩みの種で、3 億 2,000 万ユーロ (約450億円)に増加し、ウクライナ戦争の泥沼化に伴う治安情勢の悪化で、さらに増額する可能性が大きい。
一方、フランスの国内情報機関DGSIは、警察と治安サービスの調整を支援するために、特別なオリンピック情報センターを設立し、総力戦でテロ対策にあたる。
 フランス国防省は、Paris2024向けレーザー兵器システムのプロトタイプを 2024 年のパリで配備する。
 このシステムは「HELMA-P」と呼ばれる対ドローン用レーザー兵器システムで、強力なレーザー ビームを発射して、ミニまたはマイクロ ドローンを無力化することが可能だ。
またアンチドローンシステムには、ドローンの位置を特定するのに役立つレーダーと無線周波数センサーも含まれている。
セキュリティ専門家は、ドローンの脅威は近年、オリンピックなどの大きなイベントなどで指数関数的に増加しているとしている。
 テロからParis2024をどう守るか、フランス警備当局は最大の試練が待ち構えている。
Paris2024を襲う4つの暗雲 ④“ロシア排除” 混乱は必至
 昨年3月。パリ市長の左派・社会党、アンヌ・イダルゴ市長は、Paris2024で“ロシア排除”を示唆する発言を行った。 
 「私自身、オリンピックは世界における地政学の一部だと考えている。今日起こっている事態を鑑み、平和を愛する国々のグループにロシアを入れることはできない」と明言した。
 これに対して組織委員会トニー・エスタンゲ会長は、「まだ議論するには時期尚早だ」と慎重に発言したが、「時が来れば現実的な視点から熟慮しなければならない」と含みを持たせた。
国際オリンピック委員会(IOC)は、昨年2月下旬のロシアの侵攻開始4日後に各競技の国際統括団体に「除外勧告」を出し、ロシアとベラルーシを事実上、締め出した。その理由はイベント開催時の不測の事態を回避する「保護措置」だとしている。
 しかし、最近、ロシアとベラルーシの選手の「復帰」に向けた動きを見せ始めている。
国旗や国歌、国名を使用させずに、「中立的(neutrals)な旗の下」で参加させるという案である。
IOCは北京冬季大会2022では、ロシアをドーピング違反の制裁を課し、国として参加は排除して、「ROC(ロシア・オリンピック委員会)として、選手個人の参加を認めた。
 これに対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「彼らの国旗はすべて血に染まっている」と猛反発した。
 一方、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は、IOCがロシアとベラルーシの選手が大会に参加する可能性を探ることを支持して、厳密に中立的な競技者としなければならないと述べた。
 国際パラリンピック委員会(IPC)は強硬姿勢を崩さない。
「ロシアとベラルーシは加盟義務を順守できていない」として両国のパラリンピック委員会を無期限の資格停止とすることを決めた。
 IOCが「復帰」を認めた場合、反ロシアの国民世論が強い西側諸国からパリ五輪ボイコットの動きが出ることへの警戒感も滲む。
 今年から24年パリ五輪の各競技の予選が本格化する。ロシアのウクライナ侵略は一向に収束する見通しがなく、世界のアスリートが一堂に集う「平和の祭典」という理想とはほど遠いParis2024になる懸念が大きい
ロシアのウクライナ侵略に抗議するデモに参加したイダルゴ市長(真ん中のタスキをかけた女性) 出典 イダルゴ市長Instagram