Infront Sports & Media

FIFA汚職の本丸、ISL社の倒産で誕生
 Infront Sports & Media は、2002 FIFA ワールド カップのテレビおよびラジオ放送を販売する会社として、2001年春に倒産したISL社(International Sports and Leisure)の「後継」企業として2002 年 10 月に設立された。 FIFAワールドカップをコア・ビジネスとする。Infront の主な株主は、元 Adidas の CEO、Robert Louis-Dreyfus とスイスのベンチャー企業 Jacobs Holdings 。
 本社はスイスのツークのFIFA贈収賄事件の中核となったISL社が破産した跡のオフイスに構えている。
Source  Infront Sports & Media
ブラッター会長の甥、フィリップ・ブラッター氏の就任
 2005年6月、インフロント社は、FIFAワールドカップ南アフリカ2010大会で、10億ユーロ(12億7000万ドル)に相当するヨーロッパのテレビ放映権をめぐる熾烈な競争に敗れ、深刻な打撃を受けた。
FIFA は、ヨーロッパの 5 つの放送局および欧州放送連合と直接取引することを決定した。
そして2006年3月、FIFAは放送権分割を決定してその一環として、2010 年と 2014 年のFIFAワールドカップアジア地域のマーケッティング権を分割して、インフロント社に与えた。これによりインフロント社はある程度の地位を取り戻した。
 その2か月後の2006年6月、Infront社の会長、Oscar Frei氏が責任をとって辞任、46歳の若さでフィリップ・ブラッター(Phillippe Blatter)氏が社長兼 CEOが後任として就任した。
 Phillippe Blatter氏は当時FIFA会長だったゼップ・ブラッターの甥である。
 彼はスイス出身のアマチュア トライアスロン選手であり、経営コンサルティング会社であるマッキンゼーで 11 年間勤務し、グループの国際的なスポーツ・ビジネスに関わっていた。5 つの言語を話し、イリノイ州エバンストンにあるノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院で経営管理の修士号を取得している。マッキンゼーでの役割において、ブラッターは FIFA に助言するグループにも参加した。
インフロント社は声明の中で、フィリップ・ブラッター氏の「FIFA会長との家族関係は、インフロントとFIFAのビジネス関係を変える要因にはならない」と述べた。
 しかし、フィリップ・ブラッター氏の任命は、FIFA会長との癒着で利権を獲得するのでhないかという疑惑が渦巻き、FIFAの腐敗を追及しているアンドリュー・ジェニングス氏など批評家から激しく批判された。
 ジェニングス氏は「世界のサッカーは、ブラッター家による完全な支配に一歩近づいている」とインタビューで語った。
電通と合弁企業設立 アジア地域の放送権のマーケッティング権を獲得
 しかし以後、フィリップ・ブラッター氏は、ブラッター会長との関係をフルに生かすことで最高経営責任者としてインフロント社の業績を伸ばすことに着々と成功をしている。
2006年10月、インフロント社はアジアでの放送権のマーマーケッティングを推進するために、50-50%の対等出資で電通と提携し、合弁企業Foot Ball Media Service (FMS)を設立(本社はシンガポール)、2018 年と 2022 年の FIFA ワールド カップ™ と2015-2022のすべてのFIFAイベントについて、アジア、26 の国と地域でのテレビ、ラジオ、ブロードバンド インターネット、モバイル放送権のマーケティングを担当する。
 FIFA の TV ディレクターであるニクラス・エリクソンは、この契約はFIFA に最高の結果をもたらし、アジアでの配布と財務の目標を達成するのに役立つと信じていとした。
こうして電通は、アジア地域の放送権のマーケッティングを支配することになる。
ホストブロードキャスターを担うHBSを設立
 2011年11月、FIFA (Fédération Internationale de Football Association ) は、2018 年と 2022 年の FIFA ワールド カップ™ と2015-2022のFIFA イベントについて、アジア、26 の国と地域での放映権の独占販売代理店として、国際スポーツ・マーケティング会社 Infront Sports & Media を指名した。
この契約は、中国、香港、インド、インドネシア、シンガポール、タイを含む 26か国を対象としているが、日本、韓国、マレーシア・ブルネイは含まれない。
 また2002年FIFAワールドカップ日本-韓国共同開催で映像・音声制作業務を獲得することを狙って、1999年子会社、HBSを設立した。HBSは2002大会のホストブロードキャスターになり、FIFAワールドカップの映像・音声制作を担当することに成功した。以降、2006年、2010年、2014年、2018年のホストブロードキャスターを務め、Qatar2022 でもホストブロードキャスターを担う。FIFAワールドカップ IBC Source HBS

 またインフロント社は2022年までのFIFAワールドカップ大会についてアジア、アメリカ、カナダのテレビ放映権やテレビ映像を世界のネットワークに配信する権利、ホスピタリティマネージメント、アーカイブ映像保存管理を請け負っている。
 インフロント社は世界の14の国と地域に35の拠点を構え、1000人以上のスタッフを雇用して放送権の売買、マーケッティング権の売買、スポーツ・イベントでの映像・音声制作を行う世界で有数のスポーツ・メディア・ビジネス企業に成長した。その背景にあるのはFIFAと密接な関係である。
大連万達グループ傘下に
 2011 年までは株主コンソーシアムによって所有されていたが、2011年9月英国の民間投資企業、 Bridgepoint社が買収した。
 2015年2月、Bridgepoint社はインフロン社を競売にかけ、中国のコングロマリットでスポーツ・ビジネスへの進出を狙う大連万達グループ(Dalian Wanda) が「10 億ユーロ以上で購入」するという応札で勝利しインフロン社を買収した。
 同年11月、インフロン社は、大連万達グループが買収していたワールド・トライアスロン・コーポレーション(World Triathlon Corporation トライアスロンの国際大会を主催)と合併し、大連万達スポーツ部門(Wanda Sports division)となることが発表された.
 大連万達グループ(大连万达集团股份有限公司、Dalian Wanda Group)は、中国のコングロマリット(複合企業)である。通称、万達集団(ワンダグループ)。
 大連万達は海外での積極的なM&A(合併・買収)で知られ、米映画館チェーンを手始めにサッカーチームやホテル関連で買収を繰り返してきた。
 傘下に、商業、文化、インターネット、金融の四大企業を所有している。また不動産、映画制作、映画館運営、スポーツなどの事業を展開している。
 また2016年、FIFAワールドカップ・ロシア大会2018から2030年までの4大会に渡って、adidas、Coca Cola、VISAなどと並んでFIFAの最高位のスポンサーシップ、FIFAパートナーとなっている。FIFAパートナーのスポンサー料は推定170億円とされている。

FIFAワールドカップ ロシア2018大会